コラム

2018.2.1 木曜日

人を変えるためのアプローチ(3)

○聴く

尋ねることと似ていますが、「聴くこと」も、重要なアプローチの仕方です。

人は、多くの場合、聞いている時よりも話している時の方が意識が覚醒されます。そして、話している時は記憶をたどり、過去の心の状態にまで思いをはせる機会が多くなります。それの心の思いが撹拌された状態であり、その時にこそ、新しいことに気づくチャンスが生まれやすくなります。

 

フィットネス指導者のアプローチとしては、話す・教えるというよりも「聴く」方が効果的な場合が多いようです。お客様は自分が話している時に自分の問題や解決法に気づく、と考えるべきでしょう。

「聴く」というのは「尋ねる」ことと同じではありません。最初は尋ねることから始めて、当人が喋り始めたら、眼を見てじっと聴いてみて下さい。そのさい、黙って聞いていてもよいのですが、うなずきながら受け容れることや「~ということですね」などと肯定的に繰り返して確認することも効果的です。場合によっては、相手の言葉を否定しない範囲で質問しても構いません。

「聴くこと」を続けながら、お客様が本人の望むように変わっていくことができたら、究極の指導法といえるでしょう。

 

○相手の言葉を使う

お客様の話をいくら聴いても、ただ聴いているだけでは話が進まずに、相手の気づきに発展しないという場合も多いと思います。というよりも、お客様が勝手にしゃべっているだけでは不自然ですし、少なくとも相づちくらいは挟むのが普通のことと思います。

ところで、お客様の話を聴いている時に語りかけるさいには秘訣があります。それは、「相手の言葉を使う」ということです。カウンセリングに「オウム返し」というテクニックがあります。それは、お客様が話した内容について、それをそのまま繰り返すというテクニックです。

 

たとえば、「最近疲れが取れないのです」と相談されたら、「最近疲れが取れないのですね」と言葉を返すのです。

同じ言葉を繰り返しているだけですから、お客様にとっては、何らの新しい情報はありません。それでも、この「オウム返し」で十分に会話が成立するのです。そして、同じ言葉で会話をしている限り、それがフィットネス指導者にとっての理解や解釈とはずれていたとしても、少なくともお客様本人が話がかみ合わないと感じることはありません。それどころか、「私の言葉を理解してくれている」という共感が生まれることにも繋がります。

「相手の言葉を使う」という配慮が、共感を生み出すのです。

大切なのは「共感」を育むことであり、フィットネス指導者が発した言葉がお客様の心の支えになるように受け止められることが大切なのです。