コラム

2018.1.18 木曜日

人を変えるためのアプローチ(2)

フィットネス指導者がどんなに頑張ったとしても、結果としてどのようになっていくのかはお客様次第です。お客様は自らが気づいたように変わるだけなのです。それでは、お客様が“自ら気づく”という状態を導くためには、どのようにしたらよいのでしょうか。

 

○興味をもたせる

まず、いまの状況や、これから起こるであろう状況に興味をもってもらうことです。

太っている人に「太っていますね」と言ったところで、不愉快な思いを抱かせるだけ。「痩せたい」という意識をもつようにはなりません。ましてや、「痩せた方がよいですよ」と言ったとしても「痩せたい」という気持ちが強くなることはないでしょう。

ところが、フィットネス指導者があまり言う言葉ではありませんが、「私は太っているかしら?」とか「痩せたいのだけれどもどうしたらよいと思う?」というように話しかけて、問題をその人にとっての他人事として提起したらどうでしょうか。少なくとも、嫌みを言われたとか余計なお世話というように拒絶することなく、一緒に考えてくれるかもしれません。

興味をもってもらうためには、その本人の気にしていることに直接触れるのではなく、一般論や他人事として問題を共有するような働きかけが功を奏するケースもあります。

 

○好きにさせる

「好きになる」というのも、本人の自発的な感情ですので、他人から影響を及ぼすことは難しいです。ただ、「好きなタレントや有名人が使っているもの」とか「尊敬する先生が行っていること」などに興味をもつことが多いように、好きなものや好きな人を介して「好きになる」ということはよくあることです。

好きなものや好きな人との関連づけができれば、「好きになる」ための環境を整えることができるかもしれません。

たとえば、身につける服装はどうでしょう。運動するときに着るTシャツがお洒落なデザインだったら、クラブやジムに来るとき以外にも着るチャンスがあるかもしれません。Tシャツの胸にロゴや文字があって、運動を連想させるデザインであったら、クラブやジムに来ない日にも運動を意識させる刺激になるかもしれません。

もしそれが、大切な人からのプレゼントだったら、きっと大切にされることでしょう。お客様が運動を始めたいと思ったきっかけが「妻から勧められて」というようなケースだったら、シューズなどの用品を奥様からプレゼントしてもらうように働きかけることができるかもしれません。

 

○教えない

指導者はとかく「教えがち」です。先に述べましたように、「教える」ことが効果的なのは、「できないのは当人の知識レベルが低いからである」という前提条件があるときだけのことです。また、「教えたことが伝わる」のは、お客様本人が、そのことに気づく準備状況にある時だけのことです。基本的には、「教えることは伝わらない」と肝に銘じておくべきでしょう。

 

それでは、どうやって伝えるのか? それは簡単です。「伝わらない状況では教えない」という原則を貫く覚悟が重要です。

「教えない」からといって、何もしゃべらないわけではありません。グループ指導の場合には、レッスンを成立させるためには必要最低限の言葉は必要です。要は、「必要以上に教えない」という態度が重要だということです。

 

パーソナル指導の場合には、「教える」代わりに世間話をしてもよいし、相手の状況を尋ねてもよいと思います。お客様との何気ない会話の中に、お客様が抱える問題が現れる可能性もありますし、お客様の気づきが得られる場合もあります。その瞬間を見逃さずに、しかし言葉には出さずに心に留めておくことが肝要です。

そのさい、尋ねることが相手に気づいてもらうチャンスとなることもあります。尋ねることによって、相手の心は撹拌(かくはん)されますので、こちらから教えるよりも、気づきや意識の変化をもたらす可能性が高くなります。