コラム

2017.9.21 木曜日

インストラクター・トレーナーを取り巻く世界
(3)フィットネスクラブの戦略

フィットネスクラブは、クライアントの健康増進を図る機会や環境を提供することを目的として、さまざまな商品を開発・提供し、インストラクターやトレーナーも含めた多くのスタッフを雇用し、スタッフを通じてフィットネスのサービス商品をクライアントに提供します。

同時に、資金を最大限に活用して利益を上げることも企業としての行動原理となります。平たくいえば、フィットネスクラブは儲からなければならない、ということです。

つまり、クライアントの健康増進と、会社の利益の最大化という二つのミッションを達成することが、フィットネスクラブの大きな戦略目標となるのです。

しかし多くの場合、クラブが提供するサービス商品を購入したクライアントが、その商品によってどのように健康になったのか、目に見えて分かるわけではありません。このため、経営者の観点からすると、数値的にはっきりとしたかたちで表われる“利益”の方に注意が向けられやすいのです。最初から会社が最大の利益をあげることを目的としている経営者もいるかもしれません。

利益を上げるためには、収入の増加と経費の削減という二つの方法があります。より少ない経費で最大の収入を挙げる、ということが経営者の戦略の中心に置かれることもあります。

フィットネスクラブにとって、収入の柱は会費ですから、“いかに会員を増やすか、あるいは維持するか”が最大の戦略として設定されることも多くあります。しかも、“会員数=新規入会者数-退会者数”という数式によって、戦略の要点が“新規会員をいかに増やすか”“退会者をいかに少なくするか”という点に集約されることもまれではありません。

また、会員に対して、クライアントというよりは「消費者」という目線でしか接しようとしないクラブもあるようです。そのために、画一的な商品プログラムを陳列することしかできないとしたら残念です。

フィットネスクラブが、“利益を上げる”という、結果が目に見える戦略のみに目を向けている限り、“クライアントの健康増進のためにクライアントに寄り添う”という戦略は、フィットネスクラブという会社組織の中で実現されることはまれなのではないかと私は感じています。