コラム

2017.7.7 金曜日

フットマッサージ

プロフィール

中村好男(なかむら よしお)

早稲田大学スポーツ科学学術院教授、専門はスポーツ科学。JWIアドバイザー、日本スポーツ産業学会理事・運営委員長、Wasedaウェルネスネットワーク会長。

 

 

 

 

 

以前、私と、私の妻とゼミの学生の3人で海外旅行をした時に、夕食までの空き時間を利用してフットマッサージを受けたことがあります。3人並んで40分間の施術を受けました。

最初は仰向け姿勢で足の裏をマッサージ。まず妻がうつぶせになり、数秒後、私にも「うつぶせになってください」との指示がありました。施術は左足からはじめて次に右足。その後、足首を持ち上げて足関節からふくらはぎ、膝へと移りました。

両隣を見ていると、私の右側の妻と左側の学生と、足を持ち上げるのも、ふくらはぎのマッサージへと移行するのもほぼ同じタイミングで、終了時刻もほぼ一緒。ちょうど40分のマッサージでした。

3人のマッサーは、最初から最後まで、私と、私の妻と学生の3人に同じ施術をしていました。そもそもが「40分プログラム」なのですから、それは当たり前のことです。このマッサーたちはきっと、施術の手順を完璧に修得していて、いつでも誰に対しても同じ施術をしているのでしょう。私には、なんだか奇妙な感じがしました。だって、私の妻は私より華奢で筋肉も細いし、学生の方は元レスリング選手で、今は筋トレのトレーナー。筋肉モリモリの体幹をしています。

私は、フットマッサージとは、お客さんの足の疲れを癒やすことだと思っています。右足よりも左足の方が疲れている、という人がいても不思議ではありません。足裏よりもふくらはぎの方が気持ちがよい、あるいは、ふくらはぎの方が疲れている、という人もいるかもしれません。そのような人にとって、いつでも同じ施術はどのように感じられるでしょうか。お客さん、つまり人に対するサービスは、作業手順が同じであるからといって、最善の結果がもたらされるとは限りません。

フィットネスの分野でも同じことがいえます。フロントにこられたお客様に「いらっしゃいませ」と声かけをする時が、お客様の体調や気分を把握するための最初のチャンスです。いつでも同じように、マニュアル通りの声かけをしていたのでは、お客様の状況を知るチャンスを逃してしまいます。お客様の状況や期待に応じたサービス提供はままなりませんね。