コラム

2019.1.8 火曜日

ヘルスプロモーションへの挑戦13 ウォーキング研究のスタート

私たちの研究室が立ち上げたウォーキングサークルには多くの人が集まり、毎回参加者の方々にはとても喜んでいただいた。ただ、それは大変結構なことなのであるが、私たちの主要な仕事は「研究」である。ただただ、研究室のメンバーが会員さんたちのお世話(サービス)をしているというだけで済ませるわけにはいかない。

 

もちろん、「私たちの研究に協力してくれなければサークルに入ってもらいたくない」などと門戸を閉ざすつもりはない。それどころか、このサークルは、「ウォーキングの進行を通じて健康増進を果たすための社会環境整備に関わる社会実験である」と私たちは位置づけているので、このウォーキングサークルという組織自体が研究フィールドなのである。

 

だから、会員さんには気づかれないうちに“仮説”を設定してその“検証”に努めるというやり方もあることはある。しかしやはり、この早稲田大学のサークル会員の皆さんには、私たちが研究者の組織であるということを普段から認識していただきたいと思っていた。

 

そこで、補助員をやってもらっている大学院生に、彼らが携わっている研究の内容と成果を「ウォーキング日誌」の中で紹介してもらうことにした。「シューズの選び方」や「暑さとの付き合い方」などのような実利的な情報とはとうていかけ離れているのだが、それでも「一緒に歩いているのは研究者の卵なのだ」という認識をもってもらうことで、学生と会員との間のコミュニケーションにプラスの作用をもたらすのではないかと期待していた。

 

とういわけで、2000年の夏秋号から「僕らはこんな研究をしています」という見開き2ページのコーナーを設けた。第1回目は修士課程1年のS君にお願いして「速度増加に伴う歩幅増加に関連する要因」という彼の卒業研究の内容を紹介してもらった。

 

これは、同年5月に行われた日本ウォーキング学会で発表されたものであり、それに引き続くページで「第4回日本ウォーキング学会に行ってきました」という記事も掲載した。S君にとってはじめての学会参加であり、“笑いあり、涙あり、感動あり(?)”というような表現を使いながらS君が記事をしたためたのであった。

 

翌2000年冬号では、2代目ウォーキング教室リーダーのW嬢がしたためた「肥満度の違いがウォーキングの介入効果に及ぼす影響」であり、以後、「(私たちの行っている)ウォークテスト」、「ウォーキングに関する意識調査」、「日常生活活動量増進のためのウォーキングプログラムの役割」、「(ウォーキングの)実施頻度別に見たウォーキングイメージの検討」などと、ウォーキング教室やウォーキングサークルなどの参加者の協力を得て行った研究の成果を順次紹介していった。

 

そこに参加・協力してくれた人たちにとって、「ああ、あのときのあれがこういう研究成果になったのか」ということを納得してくれるような情報にしたいと思ったのである。

 

そのような試みの効果を検証したわけではないが、このようなさまざまな設え(しつらえ)によって、私たちのウォーキングサークルが、他とは一味違うサークルになっていると信じている。

 

こうして、私のウォーキング研究が少しずつ進んでいったのである。