コラム

2018.7.24 火曜日

“ヘルスプロモーション”への挑戦 I ウォーキング編
6 “住民”との出会い、そして新たな熱狂と困惑

そういうわけで、キャンパス西側の地域にはチラシを配らなかったし、参加者もいなかったのであるが、ウォーキングのコースとしては何度か利用した。なにしろ、キャンパス裏門を一歩踏み出すと“トトロの森”と評される狭山丘陵の雑木林があり、“さいたま緑の森博物館”や自然湿地の周辺は、楽しく歩ける貴重な環境を与えてくれる。

 

住戸がまばらに点在する合間に突然と牛舎が表れたりするコースは、わが所沢キャンパスならではのウォーキング環境だ。「東京にはいろいろと名所旧跡があるので歩いていて飽きないけど、所沢ではそういうわけにはいかないだろうなぁ」などと不安に感じていたのがばかばかしくなるほどである。

 

 

 

 

 

 

ある日、牛舎の隣で休憩するコースを通った帰り道、コース途上の庭先で植木の手入れをしていた男性(Aさん)が、参加者の一人(Bさん)に声をかけた。Bさんは、生まれたときからこの地に住んでいる69歳の男性で、じつはAさんとは子どもの頃からの知り合いだった。

 

A「あれ、どうしたの。こんなところを歩いて。」

B「いや、早稲田でね。ウォーキングをやるってんで。」

A「なに?ウォーキングかい。」

B「チラシが入っててね。それで申し込んだんだけど。」

A「いや、うちには無かったよ。そんなの。」

 

その時私は、ここに載せた写真を撮っていたのだけれど、あわてて間に入って、こう言った。

 

中村「いや、すみません。じつは、ここの地区には配らなかったんです。業者の手が足りなくて…。」

A「回覧板で配ればいいんだよ。この地区の人はみんな回覧板だから。」

 

なるほど、そうか。回覧板というやり方があったではないか!

 

そこで、99年春のプログラムの募集に際しては、地区自治会の協力をいただいて、狭山ヶ丘駅周辺も含めた「三ヶ島地区」には回覧板ルートで案内チラシを配布したのである。ちなみに、「小手指地区」には前回同様にポスティングで募集した。もちろん、前回の「健康づくりモニター」の積み残しの方々には、一般配布に先駆けて郵便で案内状を送付した。

 

案内を流したところ、早速、どんどんと申込み葉書が届く。ちなみに、前年秋の「電話の嵐」に懲りて、今回の申込は「葉書」だけにしたのだ。今回は、他の先生たちの協力を受けて「スポーツフィットネスプログラム」として募集したわけであるが、申込者は定員200名に対して合計421名、案内を配った地域の居住人口が60,048人であったから、赤ちゃんからお年寄りまで含めた全居住者の0.7%が申し込んだことになる。すると、申込み対応の熱気の中で、集計していた助手のN君がつぶやいた。

 

N 「で、先生。ウォーキング教室は全員受け入れますか。100人が限界だと思いますけど…」

中村「ん? じゃぁ、先着順にすればいいよ。」

N 「でも、最後の方に葉書が届いた40名近くは、みんな同じ町名なんですけど、回覧板が回るのが遅かったのだと思います。それでもみんなお断りして良いですか。」

 

う~ん。それは困った。地区によっては中々スムーズに回覧がまわらないところもあるということに気づかされたのだった。ちなみに、その地区は、狭山ヶ丘駅の近くの住宅街で、30年程前から宅地化し、いまでも新住民が流入している地区だったのだ。

 

恐るべし、回覧板。