コラム
2017.10.24 火曜日Dr.カイボーの眼
第15回 脱水
私たちの体の約60%は水分です。この体の中の水分のことを体液と呼びます。体液は主に水と塩分で、①体温調節、②体に必要な栄養素や酸素を運ぶ、③体に不要になった老廃物を運びだす、などの役割をもっています。そして、体液の割合は年齢、性別、脂肪量などで変化します。一般的に小児は70~80%、成人は60%、高齢者や皮下脂肪の多い女性は50%程度です。
体液は細胞膜を介して「細胞内液」と「細胞外液」(細胞の外の組織と組織の間や血液の血漿)に分けられます。水を飲んだり食事を摂取したりして水分や電解質を取り込み、それとほぼ同じ量を排泄してバランスを取っています。このバランスが崩れて、必要な体液量が不足することを脱水と呼びます。
脱水は軽症、中等症、重症に分けられます。軽症は体重減少3%、中等症は体重減少6%、重症は体重減少9%が目安で、症状は微熱、口渇感、尿や発汗の減少。さらに体の中で体液の多い臓器の異変による症状が出ます。例えば、脳症状としてめまい、立ちくらみ、集中力や記憶力の低下、頭痛、意識消失、けいれんなど。消化器症状として食欲低下、悪心、嘔吐、下痢、便秘など。筋肉の症状としては筋肉痛、痺れ、麻痺、こむら返りなど。
体調不良を訴える人がいて、かつ、①握手をして手が冷たい、②ベロを見せてもらって乾いている、③皮膚をつまんで、つままれた形から3秒以上戻らない、④親指の爪の先を押して、赤みが戻るのに2秒以上かかる、⑤わきの下が乾いている、これらの所見があると脱水と考えて対応しましょう。
脱水の種類には水分欠乏型脱水とNa(ナトリウム)欠乏型脱水があります。水分とNaのどちらが多く失われたかにより区別されます。水分欠乏型脱水は、病気で食事が摂れないとか、長い時間炎天下で作業あるいは運動などをして、体液が徐々になくなり、体全体の水分が失われた状態です。症状としてはのどの渇き、尿量の減少、不安や興奮などです。
一方、Na欠乏型脱水は、出血や嘔吐、下痢などで体液が急に減っていき、主に細胞外液が喪失されます。頭痛や悪心・嘔吐、立ちくらみや血圧低下などの循環器症状が起きます。
通常の運動時の水分補給はスポーツドリンクでOKですが、脱水状態になったら経口補水液を摂取しましょう。スポーツドリンクと比較すると経口補水液は電解質濃度が高く、糖質濃度は低いです。塩分や糖分は多過ぎても少な過ぎても吸収効率は弱まります。経口補水液は水と塩分と糖分をバランスよく含み、体への吸収が速いのです。
意識がはっきりしない(名前や時間を言えない)、何も口から飲むことが出来ない、などのサインがあれば医療機関で点滴が必要です。