コラム
2017.8.22 火曜日Dr.カイボーの眼
第6回 インターバル歩行とミトコンドリア
血液は、心臓のポンプ機能によって全身の細胞へと循環していきますが、ポンプの力が伝わり拍動しているのは動脈だけです。毛細血管では血液はゆっくりと流れ、細胞との間でガス交換および物質の交換をします。そしてその後は静脈となり心臓の方へと戻っていきます。
心臓の拍動による力がないのに、立ったり座ったりしていても血液が重力に逆らって心臓にちゃんと戻ってくるのは、血球が後ろから押されて進み、かつ筋肉の収縮が心臓のようなポンプ機能を果たし、また心臓に向かって一方向に流れるよう、逆流防止のための弁が存在しているからです。
血流速度は動脈が50㎝/秒、毛細血管は0.05㎝/秒、そして静脈は15㎝/秒です。血管の長さは10万キロ。地球2周半にも相当する長さです。そのうち、9万5000キロが毛細血管です。毛細血管は細胞と接し、17兆個ほどの全身の細胞と毛細血管との間で呼吸が行われます。同時に糖質などの栄養素が血液から細胞内に、老廃物が細胞から血液中に拡散します。
細胞内に入った酸素はミトコンドリアに運ばれます。ミトコンドリアは細胞内に数百個から千個ほどあり、そこでATP(アデノシン三リン酸)の再合成が行われます。ATPは筋肉が動作を引き起こすのに必要な唯一のエネルギーです。AFAAのPCを取得された方はご存知のことですが、ATPを再合成するためのエネルギーは、持続が短い無酸素的代謝であるリン酸系と乳酸系、そして持続の長い有酸素系の代謝の3つがあります。
有酸素系では、酸素+有機物⇒水+二酸化炭素の反応の過程でATPを再合成するエネルギーが生まれます。このミトコンドリアの数やエネルギー産生機能が年齢とともに減少していくことが、体力の減少との関係で説明されます。
ミトコンドリアが減るのを予防する方法として、インターバル歩行が良いそうです。徐々に歩行速度を上げていき、ちょっときついという速度まで来たら、そこでその速度を1分以上キープして、その後、ゆっくりとした歩行速度に戻します。ちょっときついと感じた時に、ミトコンドリアの活性化スイッチが入るのだそうです。
インターバルにするのはなぜでしょうか? ちょっときついと感じた時にミトコンドリアのスイッチが入り、そのまま続けてもスイッチは入ったきりの状態です。速度を下げてから再び上げることを繰り返すと、その度にスィッチが入るので、ミトコンドリアを活性化させる効果が大きくなるのだそうです。
苦行をすればより大きい効果があるだろうと考えがちですが、そうではありません。むしろ事故や故障などのリスクが大きくなります。フィットネスは安全で正しく行うことが大切ということを理解しておく必要があります。