コラム
2018.11.30 金曜日インストラクター&トレーナーの心づくりに寄り添う―高橋美紀さんに聞く
高橋美紀(たかはし みき)
JWI/AFAA指導陣、マスター検定スペシャリスト、自立型セルフマネジメント認定コーチ。La Luz CLUB HOUSE代表
奥村 JWIではインストラクターやトレーナーの皆さんの自立を支援することを事業目的の一つに位置付けています。インストラクターやトレーナーとして日々の仕事をする中で、なかなか夢や目標を見つけることができない人たちは多くいると思います。
フィットネスの技術を教え資格を付与するだけではなく、そのような方々の支援をしていくのも私たちの使命と言えます。その一環として3年前(2015年)に導入したのが自立型セルフマネジメントです。
■自立型セルフマネジメントとはどんなプログラム?
奥村 自立型セルフマネジメントとは、独自の人材育成手法である「原田メソッド」の開発者・原田隆史さんが設立した一般社団法人JAPAN セルフマネジメント協会が構成するカリキュラムです。僕自身、自分のためのメソッドを探している中で出合ったのがこのプログラムで、受講後JWIのプログラムとして導入しました。
それから3年の間に高橋さん、牛木美香子さん、柘植由美根さんが講師(認定コーチ)の資格を取得されプログラム展開をしていますが、今後も一層多くの方々の自立支援のツールとして発展させていきたいと考えています。今日は高橋さんに自立型セルフマネジメントの内容について詳しく語っていただき、皆さんの理解を深めていただきたいと思います。高橋さん、よろしくお願いします。
中村 自立型セルフマネジメント、どのようなプログラムですか? 「自立型」とはどのような意味なのでしょうか。
高橋 自分自身で自分に問いかけながら生きていくことを「自立」ととらえ、それぞれの人に合わせて目標達成のためのプロセスを提供していくプログラムです。本人が見えていない、あるいは気づいていない夢、あるいは見えていてもなかなか到達できない夢や目標を認定コーチが話を聞いたり質問をしたりしながら整理していきます。
講座は「認定プランナー2級」「認定プランナー1級講座」「認定コーチ養成講座」の3段階に分かれています。2級ではイントロダクションとして、1日で自立型セルフマネジメントの基礎を学びます。自分は何をやりたいのか、何に向かっていけばいいのか、今まで分からなかったことが見えてきます。また、自分の夢が達成された時の周りへの影響も考えていきます。
1級は2日間で学ぶ本格的なセルフマネジメント講座です。人間力や人格、あるいは他者の存在がテーマとなり、チームアセスメントというチームでの動きが入ってきます。チームの中での自分の位置や逆にチームメンバーがどういう状況になっているかを見極め、コミュニケーションを高めていくための声のかけ方(ストローク)が課題となってきます。
自立型セルフマネジメントでは2人から3人のクライアントを対象としていますが、認定コーチ養成講座ではそのコーチング法を学びます。2級までの講座で自分の本当の目標を知りそれ達成することができますが、そこでマスターしたことが自分のためばかりではなく人のためにもなることを目指します。
中村 セルフマネジメントという理想の状態があって、そこに到達するのを手伝うということですね。
高橋 そうですね。たとえ自立しても一人でやっていければそれでいいということではありません。何でも一人だけでするのではなくて、それをサポートする人もいる、社会の中で人間関係があったりチームワークを必要とする局面もあったりします。周囲に応援してくれる人がいたり、確認したり様子を聞いてくれたりする人がいることで気持ちを高めていくことができると思います。
今まで私が見た範囲では、自分の夢を叶えたいと思う人と、誰かのために夢を叶えたいと思う人の二つのパターンがあります。親が望んでいるから、自分のためと言ったら欲が強いような感じがするから「誰かのために」と思う人もいるでしょう。「自分のために」と「誰かのために」、両面必要だと提案しているのがセルフマネジメントです。一人で生きているわけではないけれど他人のために生きているのでもない。難しいところですが、それを上手に気づくことができるようなメソッドが整っています。
■なぜJWIでセルフマネジメントを?
中村 最初に奥村さんが言われた「原田メソッド」とJWIのプログラムとしての自立型セルフマネジメント、どのような点が違いますか?
奥村 内容は原田メソッドと同じですが、JWIではトレーナーやインストラクターを対象としています。コーチ陣も同じトレーナーやインストラクターとして仕事をしている高橋さんたちですから、現場の実例も踏まえたうえでの講習になっていくところにメリットがあると考えています。
高橋 社長は以前から「心」をテーマにしたプログラムも展開していきたいとおっしゃっていましたよね。「心」の部分は目には見えないためにメソッド化されることはありませんでした。何となく伝えていくもので、心を強調しすぎると宗教的なイメージが強くなりがちで、タブー視されている分野だったんですね。そこに新たに手を付けていこうとされていたので面白いと思いました。
私自身は4年前、社長がセルフマネジメント協会の講師を呼んで指導陣向けの講座を開いた時に受講しました。ちょうど自分のスタジオを立ち上げた時でした。コーチを終わるまでに半年以上かかったので、講座のワークショップとしてスタートできたのは2015年12月の指導陣年末トレーニングで、私たちが担当したセルフマネジメントを初めてお披露目したんです。
中村 その年末トレーニングで僕は奥村さんから「インストラクター・トレーナーの自立」をテーマとした講演をと依頼されました。奥村さんはインストラクターやトレーナーが自分では決められない、依存するものがないと存在できないという立場にある人がいるという問題意識をもっていて、「自立」がキーワードになっていたんですね。
■仕事の幅と可能性を広げるプログラム
中村 会社員の研修として、あるいは例えばナース向けの原田メソッドがあるように、JWIの自立型セルフマネジメントはインストラクターやトレーナーを対象としているんですね。しかもコーチも同じで対象者とのマッチング効果がある。JWIのインストラクターやトレーナーに特化した独自のプログラムになりうると思います。最後に、インストラクターやトレーナーの皆さんにメッセージをお願いします。
高橋 私たちは体を鍛えるためのトレーニング方法、心肺機能を高めるための有酸素運動などはよく知っていますが、心を整えるためのメソッドは今までにありませんでした。自立型セルフマネジメントは、心を整えることで身体も整えるというトレーニングプログラムとしてのセルフマネジメントはフィットネスの一つのメソッドです。
「自分ではセルフマネジメントができている」と思っている人でも、人に伝える際に、感覚的に「自分はこれまでこうやってきました」と伝えるのとは違って、メソッドに基づいて、明確な言葉として人に伝えることができるようになります。
自立型セルフマネジメント講座で勉強することで、そこで身につけたスキルを20~30人のグループ指導の現場にも取り入れることができます。コーチ資格を取ると、自分のクライアントに対して必要なところで問いかけをしていくことができます。自分の仕事として顧客へのサービスや収入につながることにもなります。お客様の目を達成させる方法にもなりますので、ぜひコーチまで進んでいただきたいと思います。
自分自身のマネジメントとして価値が高いだけではなく、インストラクターとして将来の活動に不安を感じあるいは体力的な限界に来ていると思っている人でも、少人数で身体を使わず座ってできる仕事にもつながっていきます。長い目で見て、人口が減っている社会の中での少人数を対象としたフィットネス指導の在り方として、この自立型セルフマネジメントはとても可能性のあるプログラムです。
奥村 JWIとしての一つの目標は、インストラクターが自分の目標を達成することはもちろん、ダンスやフィットネスの知識を教えるだけではなく、まさにJWI概念のインストラクターになっていただきたいと思っています。高橋さんもインストラクターから始まって、ここにきてセルフマネジメントのコーチにまでキャリアアップをされています。高橋さんがロールモデルとなって、多くの人たちが後に続いていってほしいですね。高橋さん、ありがとうございました。