コラム

2017.12.26 火曜日

Dr.カイボーの眼
呼吸と瞑想 (4)細胞一つ一つに意思がある

NHKスペシャル「人体」という番組が9月から放映されています。タモリさんと共に司会を務めるノーベル医学・生理学賞を受賞された山中伸弥さんは、「もともと生命は単細胞で地球上に生まれているので、体を形成しているひとつひとつの細胞には意思があると考えられる」とおっしゃいました。僕もそう思います。

 

このシリーズ番組の趣旨は、「脳や心臓が人体の中心になって体全体をコントロールしているという考え方は捨てて、体の中のあらゆる臓器、すべての細胞がにぎやかに会話をし、ダイナミックに情報交換をして、人体という巨大なネットワークを形成していることを知ろう」というものです。

 

脳が中心に座って、それがさも自分の欲求そのものだと勘違いしてしまっているひとは多いと思います。NHKのこの番組は、そうではないことを教えてくれます。また想像以上に緻密に出来ている生命の尊さを教えてくれます。私たちが生きているのは奇跡だということが理解できます。

 

同じく細胞に目を向けたものに、マンガ『はたらく細胞』(清水茜)があります。主人公はひとつの赤血球。菌やウィルスの体内侵入など、いろいろな難局に直面しますが、それを白血球、そして種々の免疫応答系やあらゆる種類の血球や細胞の助けや連携により、日常を取り戻そうとします。良く勉強し理解して描かれています。血球や細胞のすべてが擬人化されて描かれているのも画期的です。

 

何十兆個もの細胞ひとつひとつに意思があり、情報のやり取りをしていて、私たちの体が保たれている。地球上の人類は100憶くらいですから、その数千倍のネットワークです。私たちの体はそれほどに複雑で精密ですばらしいのです。でも、そのすばらしさを理解できずに、体のことを思いやらずに、脳の勝手な思いで粗末な扱いをしていないでしょうか? 毎日飲酒をするひとは肝臓のことを思いやっているでしょうか? タバコを吸うひとは全身に有害物質が周り、多くの細胞が悲鳴を上げているのをご存知でしょうか?

 

私たちは、もっと体の様々な細胞の声を聞き、生活していかなくてはなりません。このようなイメージングは瞑想をするのに有用です。細胞のひとつひとつと呼吸を通して会話をしていきます。ボディスキャンがそうですね。

 

また、イメージングの大切さは、『性格と長寿には深い関係がある』という調査結果からもわかります。百寿者を調べてみると、男性では創造的で好奇心旺盛なひと、女性では社交的、活動的、好奇心旺盛、誠実なひとが多いそうです。歳を取ると¨出来ないこと¨が増えるのでストレス要因は増えていきます。しかし、百寿者はそういうことも受け入れ、¨出来ること¨を喜ぶのです。

 

自分の基準をどこに置くかで人の幸福度は変わります。あれもこれもダメと減点法で考えれば不幸になり、あれが出来てこれもあるというように加点法で考える人は幸福です。他者や過去の自分と比較しない。今の自分を今の自分がちゃんと評価する。その際、身体のすべての細胞とも会話をして、感謝することですね。