コラム

2017.11.14 火曜日

パーソナルトレーナーになるためのベーシックライセンス
AFAA PFTを語る(総集編)

 

 

 

 

 

 

 

大塚 敬幸

AFAA/JWIフルコンサルタント、JWI-PSTマスタートレーナー。SMART FITNESS ACADEMY(千葉県)、身体リメイクSMART代表。

 

◇PFTとはどんなライセンス?

◇フィットネスカウンセラーとしてのPFT

 

 

◇PFTとはどんなライセンス?

中村 今シリーズではAFAA のPFT(パーソナルフィットネストレーナー)とそのライセンス取得の前提となるRT(レジスタンストレーニング検定)について、フルコンサルタントの大塚敬幸さんにお話を伺います。まず、RT、PFTとはどのような検定・ライセンスでしょうか。

大塚 RTは、一般の健康な成人の方にトレーニング指導をする際の基礎知識や実践指導能力などのスキル全般について、総合的に評価するための検定試験です。トレーニング指導の経験者を対象としていますので、事前にPC(プライマリーサーティフィケーション)の取得や2日間のRT検定のためのセミナー、または養成コースを受講することをお勧めしています。

RTによって、トレーニングのノウハウや、様々な環境や状況にあわせたトレーニングメニューの作成方法なども確認することができ、さらに、PFTへの大きなステップとなります。

PFTはパーソナルフィットネストレーナーのAFAA国際ライセンスで、RTが取得のための前提条件となり、さらに3日間のPFT検定ワークショップを受講し検定に合格する必要があります。単にマンツーマンでエクササイズ指導をするだけではなく、クライアントの健康づくりのための様々なニーズを一人ひとりのメニューに取り入れ、実践していくことができる質の高いパーソナルトレーナーとして認定されます。

中村 大塚さんはいつ頃、なぜRTを受け、PFTを取得されたのですか?

大塚 専門学校を卒業した頃です。中学校でバスケット部にいた時に本でトレーナーという職業があることを知り、それからずっとやってみたいと思っていました。当時はアスレチックトレーナーしか知らなかったのですが、“一流スポーツ選手のトレーナーは自分には無理かな、育成レベルの子たちがケガをせずに上を目指せるようにやりたい”と思い、トレーナー養成のコースがある専門学校に入りました。

卒業後、就職活動であるクラブの面接を受けた時に、「資格はありますか?」と聞かれ「ありません」と答えたらそれっきりで(笑)。専門学校出身で、しかも資格を持っていない者は相手にされないことに、その時気づきました。そこで、他のスポーツクラブに就職後、資格を取るために勉強して、2003年から2004年にかけてNSCA-CPT(National Strength and Conditioning Association認定パーソナルトレーナー)と、同時期にPC、続けてRT(当時はFT)・PFTを取得しました。

中村 NSCA-CPTとAFAA PFTの両方を取得されたのですね。CPTとPFT、どのような違いがありますか?

大塚 スポーツクラブなどで一般の方を対象にする時はAFAA PFT、アスリート系はNSCA CPTという認識でいます。CPTはバーベルによるトレーニングがメインで、PFTは自体重やチューブや軽めのダンベルなど簡単な道具ででき、持ち歩きも簡単でやりやすい感じがします。自分は両方取っておいた方が先が広がると思って取りました。

でも、勤めていたスポーツクラブではグループトレーニングが中心で、パーソナルのコースはありませんでした。スイミングをずっと担当しながら、テーピングのセミナーに行った時に講師をされていた接骨院の方が高校の部活のケアをしていたので、ボランティアでバレーボールとハンドボールと卓球のトレーニング指導をさせていただきました。

高校生のトレーニング指導で選手たちを見た経験から、パーソナルトレーニングの企画書をスポーツクラブに提案し、体験会もやって反応がよかったのですが、クラブ側からは「スタッフが足りないから今すぐにはできない、待って欲しい」と言われました。僕としては30歳までにパーソナルの経験を積みたかったので、クラブを辞めてトレーナーの派遣会社にパーソナルトレーナーとして再就職しました。

中村 RT、PFTを取ってから実際にパーソナルトレーナーとしての仕事を始めたのは数年後になるわけですね。PFTを持っていても、環境が整っていなければ実際にパーソナルトレーナーの指導はできないと。派遣会社に採用された時の決め手はPFTとCPTだったのでしょうか。

大塚 NSCA-CPTが大きかったかなと思います。PFTは当時あまり知られていなかったようで、「フィットネス系の資格があるんですか」という受け止め方でしたから。今でもPFTを取ればパーソナルトレーナーとして活動できる状態にはなると思いますが、さらにビジネスや集客のやり方、自分の売り出し方など、そこまではフォローしていないので、すぐにビジネスには結びつかないかもしれません。

中村 それはどこで学んだのですか?

大塚 僕はビジネス系の講座に行きました。ビジネスマナーやチラシ作成・ブランディングなどの講座などです。個人事業主として独立したのは10年ぐらい前、2007年頃ですが、僕について来て下さったお客さんが、腰痛もちとか膝が痛いとか、筋力をつけなければいけないけれどもハードなトレーニングはできない人たちでした。そこで、派遣会社を辞める2、3か月前に加圧トレーニングの資格を取得して、東大病院22世紀医療センターの特任研究員になりました。東大病院の特任研究員をしていることが、トレーナーとしての信頼度を上げてくれたと思っています。

 

◇フィットネスカウンセラーとしてのPFT

中村 大塚さんにとってPFTの魅力はどこにあると思いますか?

大塚 今、流行りのRIZAPのように、筋トレをして筋肉モリモリになりたいとか、ぎっちり痩せたいという場合はどちらかというとNSCA系、AFAA PFTの場合は楽しみながら適切な負荷をかけて健康な身体にしていきましょうという感じで、フィットネスクラブに来るお客さんのニーズにもよると思います。

またPFTは、例えば、病院に行かないまでも腰痛など腰に不安がある、妊婦さんで運動を勧められたけれども一人で運動するのは怖いという人たちなど、特別対象の方に対応することができます。

中村 PFTはクライアントの様々なニーズに応じながらトータルヘルスプロモーションを展開する、フィットネスカウンセラーのようなイメージですね。

大塚 PFTのテキストには、「ウェルネス」や「健康状態と危険度の判定」、「けがの予防」、「特殊な対象者」、「栄養と体重管理」、「行動変容とコミュニケーションスキル」といった項目があります。カウンセリング的な内容も含まれていて、「相手の話を聞く」、「こちらから一方的に話さない」といったことがマニュアルに入っています。

例えばダイエット目的のトレーニングの場合、データを出して「何キロを目標にして、この消費カロリーにしましょう」と言ってしまうと、「はい、わかりました」となりますよね。そうではなくて、「いくつかのやり方がありますが、どのやり方がいいですか? どれならできそうですか?」と、お客さんの「やりたい、やります」という気持ちを引き出すようなカウンセリングの仕方が必要だと僕は思っていて、養成コースでもそう教えています。

中村 クライアントの気持ちをくみ取って楽しくやってもらう、身体のことだけではなくて、その人がどう考えているのか、気持ちに寄り添うような要素がPFTにはあるということですね。

大塚 食事についても、PFCバランスなどいろいろな内容がマニュアル的にはあっても、カウンセリングの中で、「仕事の都合で1日2食しか食べられません」とか、「食事の時間が不定期です」と言われた場合には、マニュアル通りにはできませんよね。マニュアルに書かれていることをどのように応用するのか、ちゃんとカウンセリングをしてお客さんのお話を聞かないと効果的にはできないと思います。

中村 ところで、大塚さんはJWI PST(パーソナルスポーツトレーナー)でもマスタートレーナーの立場にいらっしゃいますが、PFTとPSTとの違いは何ですか?

大塚 PFTはフィットネスのパーソナルトレーナーですが、対象を広げてスポーツ愛好家やアスリートに対応できる技術の習得を目的とするのがPSTです。競技能力を上げケガした時の処置ができる、アスレチックトレーナー的な要素があります。

内容もテーピングやモビライゼーション、リンパトリートメント、ストレッチで、手技がメインとなっています。フィットネスクラブのインストラクターであっても、PSTを取得していれば、例えば足が痛いと訴えるお客さんを見てあげることができますし、病院や治療院に行くか行かないか迷うような人に、どうしたらよいかアドバイスできるようになると思います。

中村 これからフィットネスの仕事をしたい、これからも続けていきたいと思っている人にとってもPFTはおすすめしたいライセンスですね。

大塚 グループインストラクターでも、トレーニング系の要素をレッスンにとり入れたい時、あるいは、グループからパーソナルに行こうかと思っている方は、ぜひPFTを取得してほしいと思います。AFAA PFTにはトレーナー出身の人が少ないので、僕自分ももっと頑張って、例えばキッズの中でアスリートを目指すような子どもたちにPFTやPSTとして絡むような形で関わっていけたらと思っています。

重い重量を扱うトレーニングは場所が限られます。しかし、AFAA PFTの内容であればちょっとしたスペースでもできるので、出張トレーニングにも使えますね。RTやPFTでは、マシンジムのように器具がなくても筋力を強くしたりケガの予防をしたりする技術を習得できます。

しかも、体のことだけではなくて、カウンセリングや行動変容についても学びますので、食事など生活の基本のスタイルも含めて、お客さんに気づいていただける、気持ちを変え行動を変えるためのテクニックやスキルが身に付きます。

それから、最近、ボディ系のコンテストやSASUKEのようなアクティブなアスレチックゲームが流行っています。インストラクターやトレーナーでなくても、そういう人が自分の体作りにはまっていくと、自分の体を変えるためにトレーナーに相談するのではなくて、自分でトレーナーの知識を身につけてしまおうという方向になっていくと思います。

また、中学高校生でも運動部のマネージャーをやっている人はトレーナーになる可能性がありますね。PFT取得には年齢制限がありませんので、高校の運動部のマネージャーが取っても面白いし、スポーツ系の高校にも発信できるのではないかと思います。PFTは広がりをもったライセンスだと思います。

中村 ありがとうございました。