コラム

2017.10.10 火曜日

Dr.カイボーの眼
第13回 インストラクターの資格の「見える化」を

あるフィットネスインストラクターが、自分で仕事の場を開拓しようとして、自治体や老人施設など、知り合いのつてを頼りに、あるいは飛び込みで巡り、「私はフィットネスを市民のために、あるいは入所者さんや利用者のために提供できます。仕事をさせていただけませんか」と提案するとします。たまに返ってくる返事は、「それはいいですね。ボランティアだったらお願いしたいです。」

フィットネスをレクリエーション程度のものと理解している人も少なくありません。誰でも少し勉強すれば提供できるものと考えている人も多いように感じます。確かに、短期間で取得できる資格もあります。でも、みなさんはご存知のように、フィットネスインストラクター(以下インストラクター)と一口に言っても、そのスキルのレベルは様々であり、またその方向性も色々です。

長年の学習と実践により培われたインストラクターがもっている能力は相当なものです。そしてこれまで述べてきたように、そのようなインストラクターの方々がこれからの日本を救うのに大きな役割を果たすのです。疾病を治しコントロールするのが医師の仕事ならば、健康な人をより自分らしい生き方に導くのがインストラクターの仕事だと思っています。

現在、フィットネスの果たす重要性について、社会の認識度はまだまだ低いと思っています。もっと社会にフィットネスの価値を認めてもらえるようにしなければなりません。そのためには、インストラクターの資格の「見える化」が必要かもしれないと私は思っています。「インストラクターといっても、何をどのようなレベルで提供出来るのかわからないから信用できない」という声を、ある医師の集いでフィットネスの重要性について話している時に聞きました。

インストラクターという職業の地位を社会的に高めていくためには、これこれの資格をもっているインストラクターは十分に信用できます、ということを示す、つまり、インストラクターの資格を「見える化」する。信用されるような資格をもっているからこそ、仕事の内容も責任のある、そしてその対価もそれに見合うものとなり、フィットネスインストラクターという職業が確立したものになるでしょう。

インストラクター同士、あるいは会社との関係でも、この業界にはボランティア体質があるように思います。そのことが外に対しても同様な空気を作りだしている一因になっているのかもしれません。すべてがお金という世界ではないでしょうが、しかし、有償無償に関わらずボランティアの仕事が多くては、生計は成り立ちませんし、後継者もなかなか育ちません。

今回は、だからどうしましょう、ということは述べません。このことを皆さんの中でも話題にして、考えてみていただきたいのです。良いアイデアがあればインストラクター仲間でぜひ共有したいものです。そのようなことを話し合い、集約する場があってもいいですよね。