コラム
2017.9.13 水曜日Kids フィットネス―相澤かおりさんに聞く(総集編)
プロフィール 相澤かおり(あいざわ かおり)
AFAAコンサルタント、AFAAキッズ認定インストラクター Tumboo55 Performing Arts主幹
キッズ参加型のイベント、JUMP!
―相澤さんは2016年から始まったJWIキッズイベントJUMP!をプロデュースされています。JUMP!開催のきっかけはどのようなことだったのでしょうか。
もともとはAFAAのキッズフェスティバルから始まりました。若い時からAFAAにお世話になっていて、一時期、AFAA Japanのイベントを企画するポジションに置いていただいたことがありました。プロとしての自分の仕事がキッズ指導で、AFAAのキッズプログラムが少し低迷していた時期でもあったので、AFAA Japanを盛り上げていくために自分にできることは何かと考えたのがキッズイベントでした。
AFAA Japanは、フィットネスの普及団体として、指導者向けのイベントやワークショップを多く展開してきました。でもキッズの場合、指導者向けだけにワークショップやイベントをしていていいのかな、キッズ指導者向けのイベントってどうやったらいいんだろうと最初、迷いました。そこで、イベントにキッズを介入させれば、インストラクターも保護者さんも注目をするかもしれない、キッズに参加してもらうイベントってできないものかと思い、提案をしたのが最初です。
―AFAAキッズフェスティバルを発展させて、JUMP!というイベントを立ち上げたのですね。
私が主幹をしているTumboo55では、ダンスを通じて子どもたちをはぐくむ、ダンスによるエンターテイメントと教育をテーマとした教室展開をしています。ダンスはスポーツだったり芸術だったり教育であったり、フィットネスでもあり娯楽でもある、たくさんの要素がありますよね。
みんながみんな、上手なダンサーを目指さなければならないわけではなくて、たとえば、ダンスの発表会のための衣装やコスチュームを探しているうちにファッションや美容に興味をもつ子が出てきたり、指導に目覚める子が出てきたり、ダンスを入り口として、将来に向かっていろいろな道を見出せるようになってほしいと思っています。ダンスの教室だけれども教育もひっくるめて展開するというコンセプトがあって、それをキッズイベントにも生かせないかなと思ったんです。
―相澤さんのダンスに対する考え方が表れているように思います。
ダンスとフィットネスって、それぞれイメージが違いますよね。ダンスは芸術表現、アートで、人にどう見てもらえるか、どれだけ人を感動させられるかが大事。先生も子どもたちも技術を磨く方に力を入れると思います。フィットネスは健康のため、運動の一環として考える人もいるし、人と関わるのが楽しいとか、汗を流すことができれば、楽しければ下手でもOKという世界なんですね。ダンスとフィットネス、両方を融合させるのは難しいけれど、フィットネス業界で大人用のダンスプログラムが流行り始めたので、キッズもダンスを楽しめるように広めたいと思ったんです。
Tumboo55に来る生徒さんにもいろいろなタイプがあって、ただ音楽をかけて楽しく踊るだけでいい、つま先を伸ばすとか高く跳ぶとか、少しでも早く回ることにはあまり興味を示さない生徒さんもいます。その子たちのために、あまり難しいことは言わないで、ただ音楽をかけて楽しむだけのクラスもあります。
もっと上手になりたい、コンクールで上位を目指したいと極めていくのももちろんあるし、遊びながらダンスを楽しんでもらえるような環境があってもいい、キッズはそれぞれの目的をもってダンスをしに来るんですよね。そのことをダンス教室の先生にも知ってもらいたいと思っています。
第1回JUMP!では知り合いのダンス教室の先生に声をかけました。もちろんAFAAコンサルタントの方もエントリーしてくださって、相互の交流もでき、ダンスは誰がやってもいいと思えるきっかけづくりにはなれたかなと思っています。
―JUMP!2017がいよいよ7月22日に開催されます。
キッズが集まると親御さんも集まる、友達も集まる、地元の人たちもインストラクターさんも集まる。ただ単に体を動かしてもらうだけではなくて、つながりができます。昨年、妹がダンスで出るので見に来ていたお兄ちゃんが、今度は一般のエントリーで、参加型とあそびトレーニングに参加したいと言ってくれました。
ダンスをやったことがない子でも入りやすい、リハーサルから盛り上がって、みんなでげらげら笑い、とにかく一体感がたまらない、そんなイベントです。このイベントをすることで、一人でも多くの健やかで社会性のあるキッズが育っていけるよう、これからも発信していきたいと思っています。
ワークショップ初の試み
―Kidsフィットネスのワークショップが6月25日、Tumboo55スタジオにて行われましたね。相澤さんが「キッズプレパレーション」、松島美由紀さんが「天空大河ファンクラス」、寺西恵さんが「フィットネスフラ」を担当されましたが、いかがでしたか?
インストラクター向けのワークショップですが、JUMP!と同様に、キッズやお母様方にもご参加いただくという初めての試みでした。今までのワークショップは、インストラクターのみの参加で、参加者に「今日はお子さんになったつもりで受講してください」と言うこともありました。でも、なかなか本当のキッズを相手にしている感覚にはならないんですよね。“今日は子ども役かあ”という意識で足が遠のいたりもします。
そこで、ワークショップの参加者に、実際にキッズがプログラムを楽しんでいる様子を見ていただくだけでもいいし、一緒になって講師の真似をすることから始めるのもいいかもしれない。そう思って、Tumboo55に通っているお子さんやお母さん方にモデルをお願いしました。
受講者のインストラクターさんからは、「子どもの特質をふまえたレッスンの基本的な知識や実際のレッスンの進め方について、必要な情報を得ることができてよかった」「子どもたちと一緒に動いて楽しかったし、反応もよく見ることができた」という感想をいただきました。
参加したキッズやお母さん方にとっても天空大河やフラは初めての経験、表情もキラキラ輝いていて、とても盛り上がりました。インストラクターも楽しく実践でき、手応えを感じながらのワークショップで、100%に近い状態でお伝えできたと思います。
―相澤さんは、AFAAコンサルタントとしてインストラクターの指導もされています。キッズフィットネスインストラクターの皆さんや、これからキッズインストラクターをめざそうとしている方々にメッセージをお願いします。
キッズって、マニュアル通りには動きませんよね。そう思っているインストラクターのみなさんはたくさんいると思います。でも、子どもって一般的にこういうところがある、という情報を知っているのと知らないのとでは、全然違います。年齢別や体力別、成長段階別に定義づけられている生理学的な知識や安全性に関わることなど、たくさんの情報を知り、そのうえでタイプ別にプログラムや指導方法を変えていくことは極めて重要だと思います。
キッズはいろいろな意味での準備段階にいて、体や心の成長の出発点に立っています。自分が踊れればいいと思っているだけではダメ。大切なお子様をお預かりするので、子どもに接して「かわいい、かわいい」だけではなくて、目の前の子どもたちの10年後や20年後のことを考えてあげて欲しいです。
たとえば、フィットネスではクールダウンというカテゴリがありますが、ダンスにはありません。アクロバットは全身運動で体をバンバン床にたたきつけているのに、なぜクールダウンをやらないのでしょう? 大人になった時に影響が出てくるかもしれないし、出ないかもしれないけれども、やっておいて損はないと思います。準備体操の順番も、いろいろな説があるけれど、いろいろな説を知ったうえで選択することが大事。キッズ指導の基礎をしっかり学んで、引き出しをたくさん身につけてほしいと思っています。
それから、子どもたちが求めていることの背景には、保護者たちが求めていることがあります。保護者さんがお子さんをキッズに通わせるか、通わせないかのキーになっていますよね。インストラクターも、保護者に向けて投げかけるテクニックを身につけてほしいと思っています。
教えるって、どうしても上から目線になってしまうけれども、インストラクターはあくまで、子育てをされている保護者の方の「お手伝い」をしている。そのことを忘れてはいけないと思います。私たちが育てているわけではありません。謙虚さを失わないで情報交換していくことも必要だと思うんですね。そうすれば保護者様とも手をつないでいけると思います。
―今後、どのようなワークショップにしたいとお考えですか?
一度のワークショップで何もかも身につける、というのは難しいけれども、繰り返していくことで空気を感じ取って、少しずつ分かっていっていただければいいなと思っています。そういう雰囲気づくりに努めて、最後はみんながハッピー、ということが伝わるようなワークショップにしたいです。
キッズを教えるのは大変ですから、毛嫌いしてやらない人もたくさんいると思います。また、キッズ指導をやってみたけれど、自分が思っていることと違う、なんとなく行き詰まっている、キッズたちが何を思っているのかわからないと感じているインストラクターさんも。
でも、キッズから学ぶこともたくさんありますし、関わってみたら楽しかった、むしろ良かったと言ってくださる方もいます。一人でも二人でも賛同いただいて、キッズのプログラムを手がけることに魅力を感じていただける方を増やしたいと思っています。
―ありがとうございました。