コラム
2017.9.5 火曜日Dr.カイボーの眼
第8回 社会資源としてのフィットネスインストラクター
日本の高齢者は幸福度が低いと言われます。日々の診療でも「いつまでも生きて家族に迷惑かけて申し訳ない」「早くお迎えが来ればいいのに」などとおっしゃる高齢者の方は少なくありません。日本人の平均寿命と健康寿命の差は、男性9年、女性13年です。この差にあたる期間は、医療や介護のお世話が必要な状態にあることを意味します。平均寿命と健康寿命に大きな差があることが、幸福度が低い要因になっていると考えます。
それならば、要医療、要介護の人の割合を減らしたい。最近はフレイル(虚弱)という、健常と要介護の間のステージを示す言葉も聞かれるようになりました。要介護になる前のフレイルの人に働きかけて健常な状態に戻すことで、要介護になる人を減らそうというのです。
人がフレイルになっていく引き金は、「社会とのつながり」の低下(社会的フレイル)です。「社会とのつながり」の低下は「生活範囲」をせばめ、「こころ」の活気がなくなり(精神的フレイル)、「お口」の状態や機能が悪くなり、「栄養」状態が悪くなり、「からだ」の状態が悪くなる(身体的フレイル)。この連鎖をフレイルドミノと呼びます。
「社会とのつながり」をもち続けるには「生きがい」が必要で、その「生きがい」に出会うひとつの大きな可能性が、フィットネスの場にあります。フィットネスの場では職域、年齢差、性差の関係なしに友人ができます。年齢差のある友人は宝です。同年齢の友人しかいないと、いくら自分が元気でも、高齢になるにつれて元気な友人たちは減っていき、仲間がいなくなることで結果、自分も引きこもりがちになります。若い友人がいれば、一生元気な友人がいなくなることはありません。
そして、「生きがい」の場は身近に必要です。知識と経験の豊富な高齢者が生きがいをもって過ごしている社会は、高齢者だけでなく社会全体の幸福度が高い社会です。そのような社会になるための社会資源として、フィットネスインストラクターの存在は重要です。
今、地域包括ケアシステムが全国の自治体で作られようとしています。これは、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができる仕組みです。大切なことは、地域住民が自分のできることで協力して地域を支える互助の精神です。住民を元気に幸せにしてくれるフィットネスインストラクターという存在を認知してもらえるように、地域でアピールしてください。
もちろん、そのためには自らが責任をもって指導できることが大前提となります。自治体や地域コミュニティで関われることは積極的に受け、フィットネスインストラクターの良さを知ってもらいましょう。
自分らしい生涯を送るための生きがいづくり、そして健康づくりは、高齢者だけでなく働き盛りの頃から準備しておくことが必要です。ロコモに至っては若い女性でも問題になっていますので、若い世代への啓発も必要でしょう。あらゆる世代の局面でフィットネスインストラクターの活躍の場はあります。要は、それぞれの局面で信頼され現場を任せてもらえるかです。それには資格も必要でしょうが、もっとも大切なのは、信頼にもとづいた人間関係の構築です。