コラム

2017.8.29 火曜日

Dr.カイボーの眼
第7回 「志半ば」でもいい

快適に体を動かすことができて、心も体も自分らしく生きられるように始めたフィットネスなのに、ついつい熱が入り、もっと上のレベルになりたいと無理をした結果、故障をして、後遺症も抱えてしまうケースが見受けられます。

先日、ヨガのレッスンの終わりに、先生が「ヨガの達人になると、関節がありえない方向に曲がる人がいますよね。解剖学的に通常の動きとして説明できない。あれって、今はどうもなくても、高齢になって障害が出ないかと心配です。みなさんは健康のためにヨガをしているのですから、そこまでは求めないでいいと思います」とおっしゃいました。こういう語りかけは指導者として大切なことだと思います。モチベーションが下がることはなく、むしろフィットネスを始めた初心を思い出させてくれる言葉です。

そういえば、私がフィットネスを始めた時の初心を話していませんでした。初回で述べましたように、血圧を下げる、そして体重を20歳頃に戻そうというのはとりあえずの動機にはなりましたが、最終目標は、80歳代で何の種目でもいいのでマスターズに、出来れば世界大会に出る、ということにしています。

ということで、まだこれから25年間ほど、大きなケガをすることなく身体を動かし続けることが目標になっています。そのためには運動だけでなく、がんやその他の疾病による体調変化や、様々な偶発的な事がらへの対処など、今は予想もできない不確定要素をクリアする必要があるでしょう。

でも、そのようなことを思って漠然と不安になったり、心配したり、諦めそうになったりしても仕方ありません。実際はその時にならないとわからないのですから、目の前のことにひとつひとつ集中していって、その流れの先に通過点、そして到達点があるのです。

それにしても、日本マスターズ陸上記録を見るとすごいです。例えば、マラソン男子は80歳で3時間30分と、今の私から見てもとんでもない記録ですので、マラソンでの出場はあきらめています。

「志半ば」で亡くなることが不幸だとは思いません。むしろ「志」をもち続けたままで亡くなることは幸せだと思います。到達することのないゴールへ向かって一歩ずつ進んでいく。素敵だなと思います。目標は短期、中期、長期と3段階で考えておくといいでしょう。1年以内を短期、3~5年くらいを中期、10年以上を長期みたいにね。

そして、短期はある程度クリアな目標であっても、中期はやや範囲を広げて、長期はかなりの幅をもって考えておけばいいでしょう。なぜなら、今、考えているよりももっと素晴らしい実現可能な結果が先には見えてくるかもしれないからです。結果をひとつだけに決めつけてしまっていると、その横にもっと素晴らしいものがあっても見えなかったりします。

さて、次回は、フィットネスインストラクターが社会でこれまで以上に必要とされ、大きな役割を果たす可能性についてお話ししましょう。