コラム

2017.8.22 火曜日

FATBURN EXTREMEマスタートレーナー
藤岡可帆さんに聞く

 

 

 

 

 

プロフィール

藤岡可帆(ふじおか かほ)

FATBURN EXTREME。医療法人理事兼サービス付き高齢者住宅館長、作業療法士。2016年、BEST BODY JAPAN福岡大会ウーマンズクラスグランプリ。

◆FATBURNの魅力
◆フィットネスとの出会い
◆ZUMBA®そしてFATBURNを語る

 

◆FATBURNの魅力

奥村 今回から、2017年4月に本格始動したFATBURN EXTREME(ファットバーン・エクストリーム、以下FATBURN)のマスタートレーナー、藤岡可帆さんにお話を伺います。FATBURNは、Dianne Teoによって考案されたイギリス発祥のエクササイズプログラムです。JWIとしてのミッションである「フィットネスインストラクターの方々の活躍の場を広げる」ことを実現し得る、可能性を秘めた素晴らしいプログラムだと思っております それでは藤岡さん、中村先生、よろしくお願いします。

中村 FATBURNというのは、一言でいうと、どんなプログラムですか?

藤岡 「爽快感」ですね。ものすごくきつい、ただただきつい、自分との闘いなんですけれど、終わった時の解放感は、他のフィットネスプログラムのどれにも当てはまらないと思います。またやりたいと思えるプログラムです。

中村 爽快感、ですか。

藤岡 基本は無酸素運動の筋トレですが、今までのプログラムに対する考え方を変えていただかないと成立しないプログラムなんです。たとえば、マシンを使った筋トレでは一定のリズムができますが、FATBURNは自重によってできるだけ早く、自分の持っている力を全部出し切ります。

他のプログラムでは、インストラクターを見ながら、インストラクターが動いている通りに動きますよね。でも、筋力や持久力やスタミナは人それぞれで違います。そこが大事なところで、FATBURNで私は最初にこんな説明をします。「私が前でお手本を見せますが、私の早さや休憩を取るタイミングは真似しなくていいです。それぞれが力を出し切るようにやってください。私はもしかしたらみなさんより早く疲れてしまうかもしれない。その時に私はかまわず休憩を取ります。休憩が大事なので、みなさんも全力を出し切れなくなったら、必ず自分のタイミングで休憩を取ってください。そして、休憩から戻った時には同じように全力で、いま持っているすべてを出し切るように動いてください」。

中村 実際には、どのくらいの時間、どのような運動をするのですか?

藤岡 1回20分、前後にウォームアップとクールダウンを入れて、私自身は全体で45分のプログラムにしています。スクワット、ランジ、プッシュアップ、クランチなどにジャンプやランニングを組み合わせます。BGMはFATBURN用の音楽で、途中で「次は○○」という動きの説明があって、カウントを頭に入れて次の動きに備えることができるんですね。ただ、エアロビクスなどでは音楽のリズムに合わせて動きますけれども、FATBURNではあくまでバックミュージックで、ただ流れているなぐらいの感覚で、自分で自分のリズムを作ります。

FATBURNは誰でもできるプログラムで、それぞれがその時の体力でマックスを出せば成功です。筋トレ自体を嫌いにならない限り、嫌になることはないと思います。人によって、たとえば腰や膝に負担をかけたくない方は、強度や難度を低くしたやり方でできます。

中村 負荷を強くするか弱くするかは自分で決められるし、やり方はその人に合わせて教えていくということですね。指導の際に特に気をつけていることはありますか?

藤岡 ケガをしないように、アライメントを重視したやり方を説明しています。アライメント(背骨を軸に置いた骨格の並び方)は大切で、たとえばスクワットでは膝がつま先より先に出ないようにとか、ランジでは前に曲げた足と後ろの足の角度は90度が望ましい、前から見た状態で膝が内側に入っていたら関節によくないのでまっすぐ向いているとか。

中村 動作を見ていて、「膝がちょっと入っていますよ」とか「前に出ていますよ」と声をかけるわけですね。動作を気遣うセンスがインストラクターに求められているということでしょうか。

藤岡 大事なことだと思います。レッスン中にケガをさせるわけにはいかないので。ワークショップではそのことは強調しています。ただ、参加者の方々には「アライメント」という言葉を使うというよりは、「危険なので膝はつま先から出ないようにしてください」、「ランジをするときには90度の姿勢で行ってください」という言い方をします。「アライメントがおかしいですよ」と参加者に言ってもすぐには分からないですよね。

あとは、マキシマムインテンシティ(最高強度)が出ないと効果が出にくくて、強度が弱いとそれだけ燃焼もしないので、ともかく最大限の力を出し切るように言っています。

中村 FATBURNという名前のとおり、脂肪燃焼ですね。

藤岡 はい、燃焼効果があるんですね。トレーニング中はもちろん、トレーニングをした後も、アフターバーンといって脂肪が燃焼しつづけます。

中村 アフターバーンというのは?

藤岡 車を運転したあと、エンジンを止めてもしばらくは冷めないですよね。それと同じで、体の中でも変化が続いているんですね。それをターゲットにしているのがFATBURNです。人にもよりますが、最高強度の運動を行うと38時間から48時間アフターバーンが続くと、ある研究機関が発表しています。

中村 参加者がFATBURNで爽快感を得る、それは自分で分かるけれど、アフターバーンの場合、分からないですよね。本人は自覚しなくてもいい?

藤岡 運動が適切に行われていれば、結果として3か月、4か月で必ず体が絞れてきますから、それでわかると思います。

中村 なるほど。毎日やるというプログラムではなさそうですね。

藤岡 1日1回、週2,3回が普通のパターンです。週1回でもいいかもしれません。繰り返すことはできないですね。正確にマックスインテンシティを出し切れば、続けてはできないと思います。

中村 20分一本勝負で力を出しきる、それがFATBURNのコンセプトですね。20分間でマキシマムな疲労困憊状態をつくる。それが基本構成で、終わったら爽快感があると。

藤岡 20分後には「今日は出し切った、もうやらなくていいんだ」という満足感も得られるんですよ。

中村 インストラクターは週に何回ぐらいやるんですか?

藤岡 結構多いですよ。3~4本かな。インストラクター自身も爽快、満足、またやりたいって思うようなプログラムなんですね。マスターの石井さんなんか、もう自分を追い込んで追い込んで(笑)。私自身もトレーニングになって、はまっています。でも、一人ではできないんですね。一人だと甘えてやらない。一人じゃ無理だけれど、仲間がいて、仲間と一緒になって頑張って、だからできる。しかも、その場にいるとインストラクターさえも手を抜けない、手を抜こうと思わないほど、みんなで頑張ってしまう、そういうプログラムです。

 

◆フィットネスとの出会い

中村 藤岡さんはFATBURNを始める前にZUMBA®インストラクターとしても活動されていました。インストラクターになるきっかけはどんなことでしたか?

藤岡 もともとスポーツが好きだったので、20代の頃から横浜や世田谷のスポーツクラブに通って、エアロビクスやヒップホップのレッスンを受けていました。7年間勤めた会社を退職して佐賀に帰郷してからも、地元のスポーツクラブに入り、そこでZUMBA®と出会ったんです。

ZUMBA®は楽しくて楽しくて、そのクラブのZUMBA®プログラムには全て参加していました。そして続けていくうちに、ZUMBA®はインストラクターによってスタイルも違うし踊り方も違うことに気づき、ZUMBA®って一体何? どれが正しいの? と思うようになりました。

ZUMBA®のことを詳しく知りたくなって、インストラクターの方に「どうしたら勉強できますか?」と聞いてみたところ、ワークショップを勧められました。当時は地方では1年に1回程度しかワークショップがなくて、すぐに定員になってしまうと聞いていたので、とりあえず近い日程で受けられるZUMBA® GOLDを、神奈川県まで受けに行きました。

ZUMBA® GOLDのワークショップでは、最初に通っていたスポーツクラブで大好きだったインストラクターの方と、仲良しだったメンバーさんに13年ぶりに再会したんですよ(笑)。びっくりしました。こんな偶然って、なかなかないことですよね。

中村 いつ頃ですか?

藤岡 2011年です。それから数か月後に、インストラクターの資格を取りたくて、まず基礎を学ぼうと思い山口県でZUMBA® BASIC 1を受けました。でも、B1を修了したからといって、実際にはインストラクションのやり方が分からない。それで、AFAAのPCをとりました。

中村 PCを取得して、それからZUMBA®インストラクターとして活動を始められたのですね。

藤岡 はい、翌年から、同じクラブに通っていた友人と一緒に自分たちの友だちを集めて、佐賀市内の県の体育館のリハーサル室を借りてサークルを始めました。宣伝はしていなかったので人数が多いわけではなく10人ぐらい、1回500円でした。やりたいからやる、借りている場所がペイできればいい、儲けとかではなくただ楽しもう、という感じでした。

その後、父が理事長をしている医療法人でサービス付き高齢者住宅がオープンして、私が館長になるようにといきなり言われまして(笑)。それでも、インストラクターは副業として活動を続行して、サークルは2年ぐらい続き、その間に2つのクラブでクラスを持たせていただきました。

中村 藤岡さんご自身もトレーニングは続けていたのですね。FATBURNとの出会いは?

藤岡 最初はダイエット目的で、何か目標を掲げないとダメだと思い、ベストボディジャパンという大会に出場することを目標にしていました。初出場の年に3位で、来年は絶対に1位をとりたいと思ってトレーニングをして、去年、福岡大会で1位になりました。グランプリを獲得して「さて、次は何を目指そうかな。そうだ、もっと筋肉をつけよう」と思ったんですね。

今、お世話になっているクラブでグループファイトというプログラムがあって、そのプログラムも担当させていただいているのですが、DVDに出ているアメリカのインストラクターの方々、すごく筋肉があるんですよ。かっこいいんですね。見せる筋肉って必要だなと思って、ジムを変えて、現役ボディビルダーの方にパーソナルをしていただけることになりました。そのトレーナーの方に、ジャパンボディビル連盟の登竜門と言われている「ミス21健康美」という大会を目標にしたらどうかと言われ、その大会出場が目標になりました。

さらにさらに筋肉を増強する必要性を感じている時に、去年、2016年にFATBURNの最初の体験会に参加したんです。なんだこれ? って感じで、そこからハマりました(笑)。

中村 最初に「FATBURNを一言でいうと?」とお聞きした時に、藤岡さんは「爽快です」とお答えになりました。ZUMBA®について、一言で言うと、どうなりますか?

藤岡 「楽しい」、でしょうか。

 

◆ZUMBA®そしてFATBURNを語る

中村 ZUMBA®の楽しさとFATBURNの楽しさ、どこがどう違いますか?

藤岡 ZUMBA®は、体と心と音楽がマッチングして、音楽が体を動かす、体の動きが心とシナジーする。それがFATBURNにはない楽しさだと思います。リズムが気持ち良いんですよね。創始者のBetoさんが言っているように、音楽を感じることができて、体も動かせるプログラムですね。FATBURNは、楽しいけれど、ただただ、きつい、でも、楽しい。

心の満たされ方が違うんですよね。ZUMBA®は柔らかくて、音楽に癒され振付に癒され、ほんとこの曲好き!と感じ、心が気持ちよくなる。一方FATBURNは「やりきった!」という、やっぱり爽快感かな。それと、「これ以上続けなくていいんだ!」という解放感があります(笑)。

中村 体験すると疲労困憊になり、もうダメと思いながら、よしこれで終わったという達成感を与えるのがFATBURN。ZUMBA®は、参加していると楽しくて、どんどん動いてしまう。最終的に「楽しい」という満足感を与えるということですね。

藤岡 経験のない人や運動が苦手な人など、誰でも楽しめるとしたらZUMBA®だと思います。FATBURNはともかくストイックにトレーニングをしたい、自分と闘いながら達成感を得たい、負けたくない人向き。エアロビクスをやっている人がいればボディビルをやっている人がいるように、マッチする人の対象が違うと思います。ZUMBA®を好きな方で、筋トレも好きな方はFATBURNに興味をもっていただけると思います。

中村 脂肪燃焼効果の面からみると、ZUMBA®とFATBURN、どう違いますか?

藤岡 ZUMBA®は有酸素運動ですので、当然、脂肪燃焼効果もあるし、全身を動かすので体幹をしっかりさせるために筋肉も動きます。どちらも脂肪燃焼効果はあります。ただ、FATBURNはマキシマム インテンシティ(最高強度)で行いますが、ZUMBA®のコリオではマキシマムは恐らくないと思います。ZUMBA®はインターミッテンドで行われるプログラムなので、強度の高いものと低いものがランダムに構成されます。しかし、常にマキシマム インテンシティなのはFATBURNだけです。その違いがあって、脂肪の燃え方も違う、燃えやすいのはFATBURNです。

中村 今後、ZUMBA®とFATBURN、どちらをメインにしていこうとお考えですか?

藤岡 難しい質問ですね。そもそも立場が全く違うし、どちらも私にとっては仕事です。私は、1人のフィットネスインストラクターとしてZUMBA®を始め、エアロビスクやその他のプログラムでも活動しています。

FATBURNのマスタートレーナーは私を含め6名で、各マスターは現在いくつかのクラスをもっていますが、今年の春に始まったばかりの新プログラムです。今年10月には創始者のDianneさんが再来日してのイベントもありますが、今後どんどん普及させていきたいし、インストラクターもたくさん増えてほしいと思っています。その普及活動を担っているのが私達マスタートレーナーの使命だと考えています。

中村 藤岡さんにとって、FATBURNインストラクターの魅力とは何ですか?

藤岡 第一に、自分のトレーニングにもなることです。プログラム中のかけ声は、もはや自分に言い聞かせていると言っても過言ではありません(笑)。

第二に、自分が楽しいだけではなくて、楽しさを参加者と共有できることだと思います。そして終わったときの爽快感・達成感・満足感・解放感、時間もきつさも空間も、すべてを共有できることです。

中村 最後に、藤岡さんがインストラクターの仕事をする上で大切にしていることをお聞かせください。

藤岡 参加者あってのインストラクターで、けっして偉いわけではない。先生って言われるけれども、自分は先生とは思っていないし、参加者と一緒に楽しみたい、という気持ちを大事にしています。立場としてはインストラクターの側に立たせていただいているけれども、皆さんがいるから私はここに立たせてもらえているということを常に感じています。

それから、終わった後の挨拶を大切にしています。「FATBURN、どうでしたか?」と聞くと、「もう汗がすごくて、こんなに出したことないくらいでした」とか、「次回、絶対プログラムに入れてください」という声が返ってくるので、「ありがとうございました」だけで終わらずに、プラスもう一言を心がけています。

以前、私が参加者としてレッスンを受けていた時に、プログラム終了後に声をかけて回る大好きなインストラクターの方がいらっしゃいました。参加者にとっては、一言あるのとないのとでは全然違うと思うんですね。その一言ってとても嬉しいし、私のこと覚えていてくれたんだって思いますよね。スタジオ内だけに留まらず、コミュニケーションを積極的にとっていくことは、とても大事だと思っています。

中村・奥村 ありがとうございました。