コラム
2017.8.1 火曜日Dr.カイボーの眼
第4回 一息一息に人生がある
みなさん誰もが無意識のうちにしている呼吸。その呼吸は、体と心と魂を結ぶ大切な行為です。人の呼吸数は1分間に12回から20回。3秒から5秒ごとの浅い呼吸です。呼吸で酸素を取り込み、エネルギーを産生することで、体は生きることができます。そうして魂は体に存在し続けることができます。
心の状態は呼吸に現れます。緊張すれば浅く速くなり、リラックスしている時は深くゆっくりとしたリズムになります。そして、呼吸を使って心の状態を安寧にすることも可能です。寝ている人の呼吸を思い出してみてください。とてもゆっくりの呼吸ですよね。私は寝る前に自分の呼吸数を数えてみたことがありますが、5~6回でした。
ヨガのレッスンでは、プラナーヤーマというコントロールした腹式呼吸の練習をします。4秒ほどで吸って8秒ほどで吐きますが、これも1分間に5回ほどの呼吸となります。海のリズムにも感じるこの呼吸は、心の安寧を得られるとともに、迷走神経優位とすることで、一般的にはコントロール出来ないとされる心拍数も少なくなります。
不眠の方へお勧めするものに478呼吸法があります。4カウントで吸って7カウント息を止め、8カウントで息を吐きます。1カウントの長さが長いと7カウントの息止めの時間が長くなって苦しくなり、交感神経が活性化して余計に眠れなくなるので、1カウントの長さは短めに、そして息を吐くときは口から吐いてもOKです。不眠で苦しんでいた人がこの呼吸法で1分もしないうちに眠れたという話もよく聞きます。
この息を止める行為を保息と言います。478呼吸法では、吸気の後の保息ですから安心ですが、呼気つまり息を吐いて、吐き切って後に息を止めてみるとどうでしょう。不安や恐怖を感じます。そのまま吸わなかったら死にます。つまり、呼吸という行為により、私たちは死の淵にまで行くことが出来るのです。そして、次の息で生きることが許されます。
この保息について、私はレッスンで次のように声掛けをしています。「息を吸いきって保息するとき、私は私の存在を知ります。息を吐ききって保息するとき、私はすべてのものを手放し、思い込みや思い入れから解放されます。」
また、呼吸には、プラナーヤーマのようにコントロールする呼吸の他に、アーナーパーナサティというあるがままの呼吸があります。前者は集中力を、後者は内観力を育みます。呼吸に意識を向けて、あるがままの今の状態を受け入れるのです。マインドフルネス瞑想と呼ばれるものです。
ひとつとして同じ呼吸はありません。どれひとつとして同じ瞬間はありません。一息一息のうちに自分の人生があります。「今ここ」に自分を置くために今の呼吸を意識します。人は、無意識のうちに思い浮かんだことを機械的に判断し行動しています。その無意識を意識化することで、「今」自分が「ここ」ですることを正しく決め、より自分らしく生きることが出来るようになります。これ以上は話が長くなります。また述べる機会があればいたしましょう。