コラム

2019.1.29 火曜日

「健康ダイエットカウンセラー養成講座」の核心に迫る―加戸望杏子さんに聞く

 

 

 

 

 

 

 

加戸望杏子(かど のりこ)

株式会社ラウレア 代表取締役。肥満予防健康管理士、ダイエットアドバイザー、日本臨床栄養協会サプリメントアドバイザーほか。健康に関するセミナーや健康カウンセリング、カウンセラー育成などの事業を展開中。

 

聞き手

中村好男 早稲田大学スポーツ科学学術院教授、JWIアドバイザー

奥村辰平 (株)Japan Wellness Innovation 代表取締役社長

 

 

奥村 JWIでは昨年(2018年)にWELLNESS部門の新しいカテゴリーとして「健康ダイエットカウンセラー養成講座」をスタートしました。今日は講師をお願いしております加戸望杏子さんに講座の内容や意義についてお話を伺っていきたいと思います。加戸さん、よろしくお願いいたします。

 

□「健康ダイエットカウンセリング」とは?

中村 この講座は文字通り「健康ダイエットカウンセラー」を養成認定するための講座ですね。まず加戸さんが考案された「3週間体内記憶プログラム健康ダイエット」というメソッドについてお話をお聞かせください。

加戸 健康ダイエットメソッドとは一言でいうと、ライフスタイルを変えずに食に対する認識や食習慣を変え、頭で理解したことを習慣化し体内に記憶させていくという方法です。ダイエットの根本には病気になりにくい、健康になるための食事があるという考え方に基づいています。

実際には2時間ほど、お客様一人ひとりにお会いしてファーストカウンセリングで情報を共有した後、3週間、毎日SNSやメール、電話などでアドバイスをしています。

私は現在、500人以上のダイエットカウンセリングを行っていますが、お客様からは最初に必ずと言ってよいほど「本当に痩せられますか? リバウンドはしないですか?」と聞かれます。「これまで何度もリバウンドしているので3週間では絶対に痩せることができない」という固定観念が強い方が多いのではと考えております。

その認識自体を変えていただくために、まずはファーストカウンセリングでお話をじっくりお聞きし、お客様の体や心、習慣を分析し、ライフスタイルに合った提案をさせていただきます。そして最終的には自分自身で行動し習慣化できるようにすることをゴールにしています。

中村 カウンセリングでお客様の話をじっくり聞くところから始まるのですね。

加戸 はい。独自のアンケートなどでお客様がどのようなライフスタイルを送っているのか、睡眠時間はどうなっているのか、普段どのようなストレスを感じているのか、食事はどのような栄養素の構成になっているのか等々、徹底的に情報を共有し対策をご提案しています。

よくあるダイエットのように「糖質を極端に取れない」「脂っこい物は食べない」「単品だけ食べる」というのではなくて、摂りすぎている栄養素を減らしながら不足している栄養素をしっかり補っていただく方向でサポートしていきます。

また、スーパーでは手に入らないような食品をお勧めすることもありません。コンビニで気軽に買えるものから「食」に興味をもっていただくことが第一歩になります。我慢することなく、ストレスを溜めずにまず本人自身が食に向き合っていただくことが根底にあります。

中村 お客様が自分自身で気づきを得られるようにサポートしていくのですね。

加戸 例えば、「ジムに行っても痩せることができない」「ジムに通っても長続きしない」とおっしゃるお客様がいるとします。それは何故なのでしょうか。

もちろんジムに通うのは「ダイエットをしたい」という目標があってのこと。でも何のためにダイエットをしたいのか、実はお客様は気づいていないことが多いようです。目的意識が薄ければ続けることも食に興味をもっていただくこともできません。

「5キロ痩せる」という目標があったとして、5キロ痩せた後に自分はどんな気分になるのか、見た目はどのような自分になっているのか、それから何をしたいのか、しっかりイメージできるようにして、「二人三脚で達成していきましょう」と提案をしていくのです。そうすると、お客様との信頼関係も深くなりしっかりと続くんですよ。

 

□カウンセリングとはティーチングではなくコーチング

中村 なるほど。カウンセリングによってお客様の気づきを引き出し、そこで広がったポケットにメッセージを入れていくのが「健康ダイエットメソッド」の真髄で、「健康ダイエットカウンセラー養成講座」で養成されるのはそのようなカウンセラーということですね。カウンセラー養成にあたってのポイントはどのようなことでしょうか?

加戸 ダイエットに限らず、カウンセリングで大切なことは、ティーチング(教える)に偏らないことです。人に指導していらっしゃる方ほど、教えることはとても上手。でも教えるだけで終わっているという印象も否めません。

痩せるために「何を食べて何を控えてください」とティーチングをしても、お客様目線からすると、それだけだったらネットで調べれば済むことですし、本を一冊渡して「これ読んでおいてください」で済むことだと思います。

お客様は何故、ダイエットをしたいと思っているのか。お客様と目線を合わせて本当に欲しがっていることを引き出して、それらを整理した状態で目標設定をすることによってお客様も短時間で変わっていくんですね。ティーチング(教える)ではできないことです。

中村 ティーチングというよりコーチングですね。実際に「痩せたいんです」って相談に来られた方にどのように向き合っていきますか?

 

□「健康食事」にたどり着くまで

加戸 まず、「なぜ痩せたいのですか?」とお聞きします。そこには痩せたいと思うきっかけになった今までのストーリーがありますから。

お客様が最初におっしゃるのは大体「素敵な洋服を着たい」「人に綺麗って言われたい」とか「若々しく見られたい」という見た目です。では「なぜ綺麗になりたいですか?」ともっと深く掘り下げていくと、最終的に着地するところは、「病気になりたくない」「健康でいたい」なんですね。コーチングによりきっかけを作りご自身で気づいていただくのです。気づくと行動しますからね。

中村 コーチングの根幹は寄り添うこと。お客様自身に気づいていただくということですね。

加戸 そう、寄り添ってきっかけを作り気づいていただく。最初に来られたお客様のほとんどはダイエットについてよく理解されていません。ですから「ダイエットって何でしょう?」という問いかけをして、「ダイエット」という言葉に対して思いつくことを語っていただくのです。こちらはただひたすらメモするだけ、「それは違いますよ」とは言わずに、あくまでも全て受け容れます。答えはすべてお客様がもっていらっしゃいますから。

さらに、「ではダイエットって日本語でなんて言いますか?」と質問します。するとほとんどの方が「食事制限」とか、「痩せる」とおっしゃるんですよね。こうでもないああでもないと迷っているところで、無言で「健康食事」と書いて出すんです。もともと「ダイエット」の語源は「食事療法」。そこから「健康食事」という言葉にたどり着くのです。

お客様はそれまで自分の中でいろんな答えを探すために、集中して一生懸命考えます。その結果と全く違う答えが返ってくるとお客様は「あっ!」と驚く。そこで初めて、では「健康食事」ってどんなイメージありますか?と聞いていきます。結局、行きつくところは「健康」なんですね。

中村 「ダイエット」をポジティブに意味付けていくのですね。

加戸 そうなんです! ほとんどの方はダイエットというと「我慢」や「しんどい」とか「勇気がいる」「時間がかかる」というネガティブなとらえ方をしています。でも「健康食事」はそうではなくて、「体にいい」「特別なことではなくて当たり前のこと」というイメージに結びついていくのです。だから容易に習慣化できるわけです。

 

□「健康ダイエットカウンセラー養成講座」のすすめ

中村 「健康ダイエットカウンセラー養成講座」は2日間の講座ですね。具体的にどのような内容になっているのでしょう?

加戸 1日目の午前中に「コーチングとは」というテーマを深掘りしていきます。午後からはその実践編ですね。私が実際にカウンセリング現場でお客様にどのようにして伝えているのかも含めて、2時間のファーストカウンセリングの進め方とそのために必要な知識をお伝えします。

2日目は午前中に復習をして、午後からは今までにインプットしたことをアウトプットして頂く時間です。実際にカウンセラーとしてクライアントに向かうロールプレイをします。講座を終えて明日からすぐに実践できることがこの講座の目的でもありますので、時間をかけて細部にわたって取り組んでいきます。

中村 3週間カウンセリングによって、お客様に健康的に痩せて頂くためのプログラムの内容を理解しカウンセリングができるようになることを目指しているのですね。

加戸 はい。これからは運動指導だけではなく栄養面でも心理面でもコーチングができるトータルバランスの取れたトレーナーさんやインストラクターさんが求められると思います。私の周囲にもトレーナーとしての資格をもった方が沢山いらっしゃいますが、拝見しているとご自身の食生活が乱れているんですよ。自分自身の健康問題にも食事という視点から学んでいただきたいですね。

それから、お客様の健康づくりのためにもお客様目線できちんと落とし込んでいくのがトレーナーさんの仕事ですよね。そこに栄養や食事という要素もぜひ取り入れていっていただきたいと思っています。

中村 これまでJWIで講座を担当されていて、受講者の反応はいかがですか? 講座を受ける前と後ではどのような変化が生じるのでしょうか。

加戸 皆さん、「この二日間学んだことで人生観が変わりました」「自分の仕事に向き合う姿勢がすごく変わりました」と仰ってくださいます。「今まで現場で伝わらないことで苦しんでいましたが、きっかけと気づきが行動や習慣へと結びつく「コーチング」を学べたことで伝わる気がしています」「食や食事面だけではなくて、今の家庭、仕事に全部活用できます」と。

皆さんが時間を作って決して安くはない受講料を払い二日間交通費を使ってきてくださっているのですから、まずは「これでできる!」という自信をもって帰って頂いて、コーチングに興味があれば、そこからさらに学んで頂いたり、食についてさらに学んで深めて頂いたりするきっかけになれば良いなと思っています。

中村 自分が変わったという大きな気づきが得られるということですね。カウンセリングの方法論を学ぶことで自分が変わっていく、人生観が変わると。ありがとうございました。