コラム

2018.10.25 木曜日

MAT SCIENCE―冨永典子さんに聞く

 

 

 

 

 

 

冨永典子(とみなが のりこ)

AFAA/JWI指導陣、AFAAマスター検定スペシャリスト。民間フィットネスクラブや公共施設にて指導を行う一方、検定やワークショップを通じてインストラクターの育成に力を注いでいる。

 

―MAT SCIENCE(マットサイエンス)とは、どのようなプログラムですか?

 

 

 

 

 

 

冨永 AFAAマットサイエンスは、ヨガとピラティス、スポーツコンディショニング等のさまざまなエクササイズを、AFAAが現代の運動科学を用いてグループエクササイズ向けに考案したプログラムです。フロアに置いたマット上で、座位や仰臥位、伏臥位などいろいろなポジションで行うエクササイズで、全身の筋強化・柔軟性・バランスを高めます。特に体幹部にフォーカスし、身体をユニットとして動かすことにより、コア・スタビリティ(体幹安定)を身につけ、姿勢の改善・健康増進を目指します。

 

 

 

 

 

 

マットサイエンスでは「呼吸」に意識を向けることによって、自身の身体に意識を集中でき、人と比べることなくマインドフルネスな状態を作り出し、自分で変わっていくことを目指します。クラスにはさまざまな年齢層、体力レベルの方がいます。低体力者の方にも安心して参加頂けるように強度を下げ、慣れている方には漸進的に強度を上げる。安全性と効果性に十分配慮されているので、あらゆるフィットネスレベルの方に対応できるプログラムです。

 

―レッスンは具体的に、どのような構成になっていますか?

冨永 ウォームアップの後、メインパートでは体を温める「ヒートビルディング」、強化する「ストレングスビルディング」、柔軟性を高める「ジョイントオープナー」、そして最後にゆっくりとリラックスするために呼吸を使いエクササイズから解放するクールダウンで締めくくります。

 

 

 

 

 

 

マットサイエンスには「7つの原則」-バランスの原則、伸長(エロンゲーション・エクステンションの原則、アライメントの原則、可動域の原則、漸進性(プログレッション)の原則、流れ(Flow)の原則、呼吸の原則―があります。これら7つの原則はプログラムを組むうえでも指導するうえでも役に立ち、マットサイエンスの核となっています。

 

―マットサイエンスのインストラクターになるには、どのようにすればいいでしょうか?

 

 

 

 

 

 

冨永

2日間セミナーで15時間、マットサイエンスの理論と基本的な動きを習得していただき、検定対策セミナーを受講後、検定に合格することによってインストラクターとして認定されます。初めての方は2日間セミナーの前に6時間イントロダクションセミナーを受講されることをお勧めします。

マットサイエンスはさまざまなマットプログラムの基礎になるエクササイズを改めて科学的な観点から紹介していますので、現在ヨガやピラティス、プレコリオ系などのプログラムを指導されている方々も改めて「気付き」を得られることと思います。また流行に流されることなく、インストラクターとしても息の長い活動ができます。

 

―冨永さんはマットサイエンスのマスタートレーナーでいらっしゃいます。マットサイエンスの魅力について、改めて皆さんにメッセージをお願いします。

 

冨永 マットサイエンスは2000年代に入り、日本においてヨガがブームになる前に導入されたプログラムです。アメリカではハリウッドスターがパワーヨガで効果を上げたこともあって、ヨガやピラティスへの需要が高まりましたが、しかし現在のように指導者養成コースがない時代でしたので、指導者が少ないのが現実でした。そこでAFAAがインストラクター向けにフィットネスベースでプログラムをメソッド化してガイドラインを作り、マニュアル化して提供したのです。

マットサイエンスは、日本では導入以来、ヨガやピラティスのブームに隠れた時代もありましたが、現在改めて効果的で安全な点に着目され、地道ではありますがとても愛され、さまざまなシーンで提供されています。最近はヨガやピラティスを勉強した人がマットサイエンスを受けるという逆のパターンも出てきています。

体幹部を鍛え、胴部を安定させるエクササイズは、どの世代にも必要です。子どもは色々なアクティビティができるように、アスリートは体幹を安定させてパフォーマンスを上げるために、若い女性やダイエットを気にする人たちもインナーマッスルを刺激して代謝をよくするために。また、肩こりや腰痛のある人でも呼吸にフォーカスすることで副交感神経と交感神経のバランスがよくなり、シニア世代では転倒予防にも効果的です。すべての世代、それぞれの年代の方たちに必要なプログラムです。

私も過去、運動を仕事にしているのに首や背部の痛み、肩こりがひどかったのですが、マットサイエンスによって姿勢不良に気付き、改めて呼吸の大切さに気付かされ、自身の身体の改善ができました。アクティブなダンス系のプログラムをずっと楽しみたいと思っている方たちにとっても、自分の軸を安定させることは大切です。パーソナル指導の際にもクライアントが自身の身体にフォーカスするのに役に立ち、本当にさまざまシーンに役立つのがマットサイエンスです。いつまでもこのプログラムを通して、心身共にまた、自他共に健康である事の大切さを伝え続けたいと思います。

 

撮影協力 伊藤千佳子さん 塩貝早苗さん 大町幸代さん