コラム
2018.7.10 火曜日Dr.カイボーの眼
第32回 農作物から食文化を考えてみる
みなさんは日頃から自分がどんなものを食べているのかに注意を向けていますか? ウェルネスを考える時、フィットネスだけでは十分ではありません。食こそがもっとも大切なことでしょう。
そこで今回は食、特に農作物について考えてみたいと思います。作物を作る農法は大きく分けると慣行農法、有機栽培そして自然栽培(自然農法)の3つあります。それぞれ、どのようなものか見ていきましょう。
*慣行農法・・・戦後から普及した近代農法です。化学肥料、農薬、除草剤そして種子はF1種を使用。化学肥料は窒素を多く含みます。良く育ちますが、野菜本来の香りや味はなくなり虫にも狙われやすくなります。そこで農薬や除草剤が必要になります。
F1種とは従来の品種より多収性(収穫量が多いこと)に優れた一代雑種のことで、人為的に開発されたものです。「減農薬」という表示を見ますが、これも農薬の回数は減らしてはありますが慣行農法の中に入ります。
*有機栽培(オーガニック)・・・化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業(有機農業推進法による定義)。
有機栽培にもどんな堆肥を使うかで幅があり、牛糞、鶏糞、豚糞など蓄糞発酵堆肥を使う近代農法に近いものから、米ぬか、もみ殻、おが屑、おから、食品残渣(ざんさ 残りかすのこと)などの「ぼかし堆肥」中心、そして植物性堆肥中心のものなどがあります。
*自然栽培(自然農法)・・・不耕起(耕さない)、不除草(除草しない)、不施肥(肥料を与えない)、無農薬(農薬を使用しない)を特徴としますが、自然農法の実践者により手法は様々ですが、耕起や除草を許すかどうかに違いがあります。慣行農法や有機栽培からの切り替えは、残留肥料の問題がありたいていうまくいきません。土中の微生物やバクテリアの働きがカギとなります。種は固定種を使用し、自家採取します。
ちょっと理解が進めば自然農法が良いことは理解できますね。でも、すべてが自然農法になることは不可能です。収穫量は減りますし、天候不順の影響をまともに受けてしまいます。残留農薬など現在の土壌の問題もあり、作物の価格も高くなります。
現実的には、有機栽培による農作物が今よりも格段に増えることが望まれます。しかしこれらの食材の価格も慣行農法よりは高くなります。“身体に良いものは価格が高くても、それだけの労力がかかっているのだから納得して購入する”という文化が育つ必要があります。海外ではこの文化があります。
つまり、ここでも自分の外の現象を感じる力(「法」)が必要となるのです。スーパーに行けば、価格の安い慣行農法によるものとそれよりも価格の高い有機栽培による商品が選択できるように販売されています。自然農法によるものであれば、さらに貴重なものとして高い価格で売られています。そうすることで生産者の大変な苦労は報われます。また、自分で出来る範囲で挑戦しようというひとも増えてくるでしょう。「価格が安かろう」よりも「身体に良かろう」というものを購入するあるいは生産する文化を私たちから作り、伝えていきたいものです。