コラム

2017.8.31 木曜日

インストラクター・トレーナーを取り巻く世界
(1)フィットネスの戦略と戦術

一般に、スポーツの世界には戦略と戦術があります。戦略とは、勝負に勝つという目標を達成するために、大局的・長期的な視点に立って計画を立てること、戦術とは、個々の局面で立てられる具体的な方策を意味します。

たとえば、サッカーの場合には、4人のディフェンスをフラットに並べる“ゾーンプレス”とか、ディフェンスが相手から奪ったボールを大きくキックして前線に送る“カウンター攻撃”など、さまざまな戦術があるといわれます。

これらの戦術は、一つ一つの試合で勝利するために実行されるものですが、ワールドカップやオリンピックなどの大きな国際大会で、予選リーグで最後の試合に勝って1位になると、その後の決勝トーナメント戦が不利になることがわかっている場合、試合で点を取らないようにするケースもあります。これを戦略といいます。試合に勝つという目標がより大きな勝利のためには犠牲になることもあり、戦略的判断が戦術を決めるともいわれます。

フィットネスの場合はどうでしょうか。

たとえば、インストラクターがフィットネスクラブでグループエクササイズの指導をするプログラムがあります。また、「筋肉を強化したい」とか、「体脂肪を減らしたい」といった、クライアント一人一人のニーズに合わせて提供するプログラムもあります。これらのプログラムがフィットネスの戦術ということができます。

一方、クライアントの側に立ってみると、提供されたプログラムの中から自分の好みや目的に合ったものを取捨選択することができます。その選択の基準となるのが、フィットネスによって「筋肉を強化したい」「体脂肪を減らしたい」という戦略的目標となります。インストラクターやトレーナーは、クライアントの希望に沿って、その目標を達成するために必要な技術を提供し、クライアントの最終目標をかなえるための戦術を組み立てます。

フィットネスクラブの経営者も、クライアントの希望をかなえることができるように、施設を整備してインストラクターやトレーナーを配置します。すべてはクライアントの目標達成のために努力しているといってもよいでしょう。

ところで、フィットネス業界にはフィットネスクラブやクラブの会員、インストラクター、教育団体等々、さまざまなステークホルダー(利害関係者)が存在します。インストラクターやトレーナーは、そのなかで最善を尽くすわけですが、じつは、すべてのステークホルダーがいつも同じ戦略的判断に基づいて戦術を考えているわけではありません。

この点について、次回から考えてみましょう。(つづく