コラム

2018.8.23 木曜日

“ヘルスプロモーション”への挑戦 Ⅰ ウォーキング編
7 「歩き始める人々」の気持ち

さて、1999年春、第Ⅱ期のウォーキングプログラムがスタートしたわけであるが、ここでどうしても調べておきたいことがあった。それは、「いったいどのような人々がウォーキング教室に参加するのだろうか」ということである。

 

そこで、今回(第Ⅱ期)のウォーキング教室については、チラシを配布した地域(小手指地区&三ヶ島地区)の選挙人名簿から無作為抽出した500名に対して同じ内容の質問紙調査を行って、その参加者の特徴を分析した。この地域の居住成人6万6154人のうち、第Ⅱ期のウォーキング教室に参加したのは166名(参加率は0.25%)であり、性差は大きくないが、年代別にみると参加者のほとんどは40歳以上であって、60歳代の参加率が最も高かった。

 

職業別に見ると「主婦」ならびに「その他」(おそらく無職)が高く、「自由時間」が多いほど参加率が高くなる傾向が認められた。つまり、“ウォーキング教室”に参加しようと思う人たちは、女性であれば50歳以上の主婦、男性であれば60歳以上のリタイア組で、生活時間にゆとりのある人々が多いということになる。

 

このようなことは、こんなに大がかりな調査をしなくてもわかるような、いわば“当たり前”のことなのだが、それでも、なにもノウハウを持たない段階からそれこそ手探りで無我夢中に試行錯誤してきた実践研究から得られた、初めての「確証」だった。この“当たり前の結果”はつまり、この調査が信頼に足るものであるという自信を私たちに与えてくれたのだ。

 

そこで、さらなる分析を行った。健康意識や運動実施状況によって人々を分類して、参加率を推定したのである。その結果、「健康へ留意を払う人」のほうが「留意を払わない人」に比べて2倍以上の参加率を示し、「週3日以上運動をする人」は「週1回未満」の人に比べて6倍近い参加率を示したのであった。ん?…ということは、このウォーキング教室に参加した人たちって、週に1回以上運動していた人が大半だったというわけ?

 

そうなのだ。もともとは、「普段あまり運動していない人がウォーキングを始めることによって健康的になってくれれば良いなぁ」という思いで始めたウォーキング教室だった。けれども、いざ蓋を開けてみると、このウォーキング教室がなくても元々歩いていた人々が大半で、「このウォーキング教室をきっかけとして歩くようになった」という人は実はあまり多くはないということなのである。

 

第Ⅰ期(1998年秋)のプログラムの参加者と接触しながらそのような感触は得ていたのだが、当該地域の人々のウォーキング実践状況とプログラムへの応募・参加率という今回の調査によって、その確証が得られたというわけである。「運動していない人」あるいは「運動に興味を示さない人々」をウォーキングの世界に誘うことが容易ではないことをあらためて認識した次第である。